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  • こんにちは、森本愛です。パリのパティスリー「Sebastien Gaudard セバスチャン・ゴダール」でセバスチャンのアシスタントとして仕事をしています。アシスタントといってもお菓子を作るパティシエではなく、広報、マーケティング、イベントやコラボレーション企画のプロジェクト管理などを主な仕事としています。フランス人が愛して止まない「パティスリー」の表舞台と裏舞台の両方に関わる日々は、発見と驚きの連続。この連載で皆さんと少しでも共有できたら幸せです。
                                 森本愛

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 移動祝祭日 ”Paris est une fete”  vol.8「ノエルの準備」

一年で一番華やかなイベント“ノエル”がいよいよ近づいてきました。フランス各地でマルシェ・ド・ノエル(ノエルにちなんだ食べ物やデコレーションを販売する特別マーケット)がお目見えし、パリ中のお花屋さんの店頭には、クリスマスツリー用のモミの木たちが行儀良く鎮座しています。

ところで、フランスのクリスマスの準備に欠かせない“カランドリエ・ド・ラヴァン(Calendrier de l'Avent)”という風習をご存知ですか?Calendrierはフランス語で“カレンダー”、Aventは“待降節”を意味します。カトリックのフランスではクリスマス前の4週間がキリストの誕生に備えて準備する期間(待降節)とされており、このノエルまでの準備期間のための特別なカレンダーが“カランドリエ・ド・ラヴァン”。実は毎日一つ小さなプレゼントが隠されたスペシャルなカレンダーなのです。

一般的なカランドリエ・ド・ラヴァン厚紙で作られた家の形やクリスマスツリーの形をしていて、多くは子ども用に売られています。そして必ず1~24の番号が書かれた小窓がつけられています。この小さな扉を開くと、中にはショコラやボンボンなどのこれまた小さなプレゼントが一日一つ用意されているという仕組みです。つまり、毎日一つずつこの窓を開けながらノエルに思いを馳せ、ノエルまでの気持ちを高めてゆくのです。

          ノエルまで待ちきれない!セバスチャン・ゴダールの今年のカランドリエ・ド・ラヴァンは
          真っ赤なモミの木にコンフィズリーやショコラのプレゼント

この実に愛らしい習慣、歴史は古く19世紀のドイツまで遡ります。当時はショコラの代わりに、一日一枚宗教画のミニチュアカードが配られていたとか。現代のように小窓付きのカレンダーに商品化されたのは1920年代のこと。さらに美味しいショコラが小窓の中に隠されるようになったのは30年ほど後の話ですから、現代のフランスの子どもたちはなんて恵まれているのでしょう!

という訳で、11月の中頃になるとパリのパティスリーではそれぞれのメゾンが毎年思考をこらしたカランドリエ・ド・ラヴァンを発表します。24個の小窓の中にはメゾンのスペシャリテで且つ日持ちがするもの、ショコラに加えてパート・ド・アマンド、カリッソンやボンボン・・・といったコンフィズリーも隠れていますから、子どもだけでなくグルマンな大人たちにとってもたまりません。

         パリで一番の老舗、A LA MERE DE FAMILLEでも美しいメゾンの形をした
         カランドリエ・ド・ラヴァンが登場!

さらに年々商業化が進み、ファッションやコスメのブランドが大人向けに思考をこらしたカレンダーを販売するようになりました。例えばDiorからは数量限定で一つ100ユーロを超える豪華なカランドリエ・ド・ラヴァンがお目見え。プレゼントは高級ショコラのオンパレード、プランタン百貨店のみの販売です。イギリスのマニキュアメーカーCiateからは一日一つずつカラーが異なるマニキュアが小窓に隠されて45ユーロほど。パリ市内のSephoraで販売されています。他にも、ウィスキーメーカーからは毎日違うお酒が小瓶に入って小窓に隠された大人の男性向けのカランドリエ・ド・ラヴァン、飼い犬用にペットフードが小窓に隠されたワンちゃん向けカランドリエ・ド・ラヴァン…。といった具合に、ノエルを待ちきれないフランス人の楽しいアイディアに脱帽です。同時に、冬のパリ旅行のお土産にも最適、子どもにも大人にも喜ばれそうですね。

         手作りのカランドリエ・ド・ラヴァンは簡単にできます!

最後に紹介するのは手作りのカランドリエ・ド・ラヴァン。雑誌やインターネット上で様々な手作りカレンダーのアイディアがたくさん紹介されるのもこの時期の特徴です。身近にある素材で簡単にできますので、彼や彼女へのプレゼントに、あるいはお子様と一緒に手作りするのも楽しそうです。

例えばご自宅にある植木を使ってみましょう。枝のアチコチに厚紙で手作りしたミニチュアの家を24個吊るします。もちろん24個の厚紙の家の外側に1~24の番号を見えやすく書き入れます。この厚紙の家作りが面倒でしたら、封筒を24枚でもかまいませんし、小さな靴下や、マッチ箱などの小さな空き箱でも代用できます。

そして、最後に24個の小さなプレゼントを一つ一つ箱の中に忍ばせます。アイディアを膨らませて楽しいプレゼントを用意しましょう。子どもたちはやはりショコラやボンボンでしょうか。大切な彼女へは口紅やアクセサリーも喜ばれそうです。ご家族宛には心のこもったお手紙や家族旅行の写真もいいかもしれません。世界で一つだけのオリジナルなカランドリエ・ド・ラヴァンですから、スペシャルなノエルがやってくること間違いなしです。

皆様のJoyeux Noelを願って!

イラスト
Iveta Karpathyova
ILLUSTRATION & CREATIVE SERVICES
www.ivetaka.com

 

 パティスリー「セバスチャン・ゴダール」

Patisserie des Martyrs - Sebastien Gaudard -
パティスリー・デ・マルティール - セバスチャン・ゴダール -

セバスチャン・ゴダールが2011年にオープンした初の路面店。場所は美食通りとして名高いパリ9区のマルティール通り。コンセプトはフランス菓子の伝統を伝えること。斬新さやデザイン性を追及するのではなく、誰もが記憶に留めているフランスの古き良きクラッシック・パティスリーの奥深さを追求。ショーウィンドーを飾るのはパリ・ブレストからサントノレといった伝統パティスリーに加えて、クロワッサン等のヴィノワズリー類、ボンボン・ショコラ、アイスクリーム、昔ながらの飴類、お茶類など、コンフィズリーも充実。さらに、パティスリーに合わせて楽しめるシャンパンやワイン、リキュールなど、アルコール類も豊富に取り揃えている。
Patisserie des Martyrs -Sebastien Gaudard-
22, Rue des Martyrs 75009 Paris
Tel : 01 71 18 24 70
www.sebastiengaudard.com 

Sebastien Gaudard セバスチャン・ゴダール
1970年ロワール地方生まれ。『FAUCHON(フォーション)』のシェフ・パティシエを務めた後、老舗高級百貨店『Le Bon Marche(ボン・マルシェ)』にサロン・ド・テ『Delicabar(デリカバー)』をオープン。
時代をリードする存在として注目される。2011年自身の名を掲げた路面店『Patisserie des Martyrs - Sebastien Gaudard-』をオープン。
2012年 Guide Pudloが選ぶ『トップシェフパティシエ』受賞
著書
『Agitateur de gout』 2006年 (Hachette出版)
『Le Meilleur des Desserts』 2009年 (Hachette出版)

  • サンシュルピス広場

    パティスリーの店内

  • セバスチャン・ゴダール

    セバスチャン・ゴダール氏  

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