パリプチ歩記

  • イメージ1
  • パリは「街自体が美術館」という言葉をモットーに、
    パリ在住の・・・
    街歩きに余念のない「パリが恋人」のともこと
      食に恐ろしく敏感な舌を持つ「歩くグルメ本」のちあき

         ・・・この2人がみなさんにパリの魅力をご紹介!!

      「地区別パリの街歩き術」として、短い滞在を効率よく回る
      べく、とっておきの散策モデルを提案しま~す。

  • イメージ2
 

  

 4回目 パリのパッサージュ 後編

パリ市内 前編の「優雅なパッサージュ」に続いて、今回は「雑多なパッサージュ」を紹介しよう。

 パッサージュ・デュ・グランセール

パッサージュ・デュ・グランセール パリには「人種の坩堝」を象徴する界隈はたくさんあるが、ここエティエンヌ・マルセルからサン・ドニにかけてのパッサージュ散策では、「一粒で2度美味しい」パリの異なる表情が見られる。

大ショッピングセンターとして若者に人気のフォーロム・デ・アールの北、エティエンヌ・マルセルには、カブキ、バルバラ・ビュイ、パトリック・コックスを筆頭に洒落たブティックが多い。モントルグイユ通りでは、美味しい食材に出会えるこれまた人気の市場通り、とトータル的に人生を謳歌する粋なパリジャンが集う地区。

その一画にパッサージュ・デュ・グランセールがある。名前の由来は、かつてここに「グラン・セール(大鹿)」という名の宿があったことによるという。ルイ・マルの古い映画「地下鉄のザジ」のなかで、ザジが走り回るパッサージュがここ。ただし、雰囲気は現在とまったく異なる。というのも、東側の入り口はかつて「娼婦街」として知られたサン・ドニ通りに面しており、当時は決して環境のよい場所ではなかった。産業地区だったこともあり、パッサージュ内も工場や工房などが立ち並んでいた。
パリのパッサージュの中でも屋根が高く、住居としても機能していたそうだが、20世紀後半には廃墟と化し、閉鎖にいたった。その後、修復工事が行われ、再開した1990年以降はおしゃれなエティエンヌ・マルセルにふさわしいアトリエやブティックが次々オープンし、垢抜けたパッサージュとして生まれ変わった。De Marseille et d'Ailleursドゥ・マルセイユ・エ・ダイエールは、最近日本の雑誌などでも頻繁に紹介されている、ナチュラルなコスメやアロマ、石鹸が揃う店。La Corbeilleラ・コルベイユでは、サンドリーヌのキッチュなイラストの雑貨や新進のクリエーターによるデザイン性の優れたオリジナリティたっぷりの商品に出会える。ほかにも興味深い店がいっぱい並ぶ魅力満載のパッサージュとしてパリジャンの期待も大きい。

  • パッサージュ・デュ・グランセール2

    11,8mの高さはパリで一番

  • ラ・コルベイユ

    ラ・コルベイユ

  • ドゥ・マルセイユ・エ・ダイユール

    ドゥ・マルセイユ・エ・ダイユールは人気のナチュラル製品の店  

 パッサージュ・デュ・ケール

サン・ドニ通り さ~、パッサージュ・デュ・グランセールを出たらサン・ドニ通りを北に歩こう。娼婦取締法が厳しくなった後も、昼間から通りの左右に娼婦の姿が見られる。ほとんどがグラマラスな年配の娼婦。

この辺りは既製服の問屋街。パリで最も古い1799年建造のこのパッサージュは、同時にパリで現存するパッサージュの中で最も長い。
ケールとはエジプトのカイロを意味する。それも、ナポレオンのエジプト遠征を記念して命名されたそうだ。確かに異国情緒たっぷりで、パリというよりもカイロの市場「スーク」を連想させるに違いない。ここも現在は問屋街、というだけに週末は閉まっているので要注意。

  • パッサージュ・デュ・ケール

    問屋街として知られ、庶民感たっぷり

  • パッサージュ・デュ・ケール2

    この日は週末…豪奢な鉄格子で閉ざされていた

  • サン・ドニ門

    パリに5つある門のうちの一つで最も古い

そのままサン・ドニ通りを北上すると、サン・ドニ大通りに出る。シャンゼリゼ大通りの凱旋門より古い1672年建造のサン・ドニ門が立つ。門は立派だが、この界隈は何か妙な雰囲気。そう、アフリカや中近東からの移民の多い地区のため、男性本位の労働者の町、といったイメージが強い。
ここは治安もあまりよくないので、緊張感を持って歩こう。

 パッサージュ・プラド

  • パッサージュ・プラド

    整然としてシンプル感の強い入口

  • パッサージュ・プラド②

    天井装飾と店とのギャップにはなかなか慣れず...  

  • パッサージュ・プラド内にあるホテル

    アール・デコの装飾に調和したホテル

パッサージュ・プラド3 「とんでもないところに来たものだ」と一瞬思うかもしれない。この辺りはとにかくインド人が多く、床屋、ビデオ屋、軽食屋、カフェなどどこもインド人経営。
元は普通の通りだったのに、1925年に屋根が作られたそうだが、これがなんとも奇妙なアール・デコ調。くの字型のパッサージュの真ん中に安ホテルがあり、これまたアール・デコ装飾のパッサージュ内にいい感じに収まっている。今回は驚きと感動による動揺から、ホテル見学は控えたが、ぜひ一度客室を見てみたいものだと思う。

 パッサージュ・ブラディ

パッサージュ・ブラディ 10年ほど前、パリの街歩きに余念がなかったとはいえ、この界隈には縁がなかった頃、フランス人の友人の提案により、夜中近くに食事に来たのがこのパッサージュ。移民が多く、ざわざわとどこか物騒で、フランス料理一筋だった当時の私にとしては、この夜中のインド料理に違和感を覚え、その後、再び訪れたいとは思わなかった。
修復作業もままならず、すたれた感じが強いパッサージュ内には、インドやパキスタンの食料品店や衣料品店、パリの物価からは考えられないほど安い床屋のほかは、たくさんのインド料理屋が並び、各店頭での呼び込みが盛んだ。パリジャンがこのパッサージュを訪れる一番の目的は、やはり本場仕込のインドカレーを味わうことだろう。

悩んだあげくに決めたレストランのテラスでインド料理を食べていると、前にある床屋に買い物カートを持った一人のインド人女性が立ち止まった。次にカートからバゲットを取り出すと、中にハムやチーズを詰め、床屋にいる人々に渡している。どうやら移動サンドイッチ屋といった様子で、パリの華やかな有名ブランド街などでは決して見ることの出来ない裏のパリであり、移民が多い真実のパリの姿でもある。10年前とは異なり、こんなどろどろしたパリでも今ではしっかり受け入れることができ、愛着さえも感じる・…。

パッサージュ・ブラディ2 パリに来た時にフランス料理を味わうのは当然のこと。それは高級な三ツ星レストランから街角のビストロまで時間とお金に余裕があれば様々なものを味わいたいし、味わうべき。美食大国のフランスに来たのだから。
花の都、光の都のパリは食の都とも言うことができるでしょう。パリにおける世界のグルメの幅は広くそれは東京並みと言えるかしらん。ただ、東京と違う点はパリは移民が多く、その大衆移民向けの店も多く、料金も彼らの生活水準に比例しているというか、とにかく安いというのが私の印象。
日本の場合は、エスニック料理と名打っても、内装をシックにしたり、本場よりももっと上品に仕上げているから値段もそれに従ってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。東京だとクロックムッシュ(軽食としてランチやおやつの時間に頂くベシャメルソースとハムが入ったホットチーズトーストサンド)さえもおしゃれなフランス料理になってしまう。日本にいる人たちからは贅沢な食生活というイメージを持たれて嬉しいような、照れくさいような。
でも、パリではそれがない。というか、外国の庶民の味はこちらにきて上品に奉られレストランメニューに掲げられるので、異国の地に移民した人たちが故郷を偲び、その味を回顧できるようにと庶民の味と値段もあり一辺倒ということがない。ひとつの料理で高級嗜好と庶民派とに分かれ、出入りする層も分かれているというのが、この国に移民街というものを築くことになったのでしょう。

インドカレー 今回、ともこさんと私が訪れたのは数あるパリの移民街でも人気のあるインド人街、パッサージュ・ブラディのインド料理の店。旅行中のフレンチ続きでちょっと箸休めをしたいときにいかがでしょうか。インドカレーについてはここで改めて紹介しなくても日本でも十分に人気のある料理ですから、今回はエスニック料理であるインド料理とワインについてご紹介しましょう。
一般的にはスパイスの効いた料理にワインを合わせるのは難しいです。料理の味が濃すぎてワインが負けてしまうからです。でも、フランス料理には野禽・ジビエと呼ばれる、やはり味に強烈な個性があるものもあり。それに合うワインもあるのですからインド料理にだって合うはず。
例えばタンドリーチキン。ちょっと辛味があって、でもチキンのうまみも十分に味わえるこの料理、私ならローヌ地方のワインを選びます。コート・デュ・ローヌであれば赤でも白でも良いでしょう。もっと地域を限定してというのであれば、ちょっと奮発してタン・エルミタージュなんかも良いですね。
豆やほうれん草のカレーなら、こちらはスパイシーというよりも少し甘味があるので、やはりこれまた南仏はラングドック地方のロゼ、タヴェルロゼなんていうのはどうでしょうか。このロゼはロゼというよりも赤に近い色合いなので味に深みがあります。

  • インドカレーお試しセット

    私が頂いたのはインド料理のお試しセット。

  • パッサージュ・ブラディ3

      

  • パッサージュ・ブラディ4

    一見可愛いタイルも古さ故に・・・

 ちょっとコラム

リトル・インディアのパレード パリ東駅界隈はリトル・インディア。

インドやスリランカの移民が多く住み、ここで伝統を守りながらフランスと融合して暮らしています。この日はクリシュナ神の誕生日ということで町では盛大なパレード。
パリにいながらインド文化に触れられる、コスモポリタンな都市に住んでいることを改めて感じます。

  • リトル・インディアのパレード2

      

  • リトル・インディアのパレード3

      

  • white

      

パリのパッサージュ後編マップ

ページトップへ戻る