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  • こんにちは、森本愛です。パリのパティスリー「Sebastien Gaudard セバスチャン・ゴダール」でセバスチャンのアシスタントとして仕事をしています。アシスタントといってもお菓子を作るパティシエではなく、広報、マーケティング、イベントやコラボレーション企画のプロジェクト管理などを主な仕事としています。フランス人が愛して止まない「パティスリー」の表舞台と裏舞台の両方に関わる日々は、発見と驚きの連続。この連載で皆さんと少しでも共有できたら幸せです。
                                 森本愛

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 移動祝祭日 ”Paris est une fete”  vol.9「ボナネ!」

Bonne Annee!新年の元気な挨拶がパリ中をこだましています。
皆様、新年明けましておめでとうございます。どんなノエル&お正月を過ごされましたか?

175ユーロ・・・年明け早々、気になる数字をニュース番組で目にしました。年末のノエルの晩餐にフランス人一般家庭が消費した平均金額です。なんでも前年の2%増で、まさにフランスのノエルは不況知らず。さらに同時期フランス人がショコラ購入に使った総額はなんと6億ユーロ。家族同士、友人同士で箱詰めのボンボンショコラをノエルに贈りあう習慣が強いこの国ですが、それにしてもフランス人がいかにノエルを大切にしているか伝わってくる数字です。ちなみに、ボンボンショコラに続いてノエルの贈り物定番コンフィズリーと言えば「マロングラッセ」。シャンパンだけではなく、スイーツもノエルの大切な主役なのです。

ところで、ノエルの晩餐にどんな料理がフランス家庭のテーブルを飾るのか、皆さんご存知でしょうか。簡単に代表的なメニューを紹介してみましょう。まずは、もちろんシャンパンで乾杯。そしてフォアグラにキャビア、燻製サーモンのオードブルに加え、この時期最も食される生ガキが堂々とハレの日の食卓を彩ります。同時にフォアグラに合わせて甘い白ワインの栓が抜かれ、スモークサーモン用に薄切りパンがこんがりトーストされます。続いてメインはロブスターや伊勢エビ、ズワイガニといった海の幸が最近のはやりだとか。ここでワインが辛口の白ワインに移り、料理によっては続いて赤ワインが登場。通常ならこの後はフロマージュの盛り合わせが振る舞われるところですが、ノエルは例外。大抵の場合、もう胃袋がはち切れんばかりで、フロマージュはスルーしてお楽しみのデザートへ。切り株の形が印象的なノエルの定番ロールケーキ、「Buche de Noel ビュッシュ・ド・ノエル」がこの日の最後の主役です。

フランス人にとってノエルは一年で一番大切な日。この日ばかりは遠くに暮らす家族や親戚が皆、実家の両親の家に集まります。日本で言うところのお正月でしょうか。一年に一度の貴重な家族の時間、離婚率の高いフランスだからこそ、年々ノエルの食卓を家族で囲むことの重要性が高まっているように感じます。

そしてノエルの熱が下がらぬうちに新しい年を迎え、1月の最大のお楽しみ「Galette des Rois ガレット・デ・ロワ」がパリ中のパティスリーに登場します。ガレット・デ・ロワは1月6日の公現祭を祝していただくフランスの伝統菓子、アーモンドクリームを包んだパイ生地のまん丸いお菓子です。1月6日はイエス・キリストの顕現日に由来する祝日で、フランス語ではEpiphanieエピファニーと呼ばれます。

このお菓子の最大の楽しみは中に隠された『Feve フェーヴ』というミニチュアの陶器の人形。フェーヴとはフランス語で「そら豆」の意で、元々は本物のそら豆がお菓子の中に隠されていました。遊び心溢れる伝統菓子ガレット・デ・ロワは、家族や友人を集めて賑やかに食されます。幸運にもフェーヴを食べ当てた人は皆に祝福されてその日限りの「王様」の座を射止め、王冠(紙製ですが)を被り、気分よろしく残りのアーモンドクリームを頬張るのです。ちなみに金に輝く紙製の王冠は、お菓子を購入する際にパティスリーが持たせてくれます。お菓子で運試し・・・、新年をお祝いするのにぴったりなスイーツのイベントだと思いませんか?

こうして年末年始を振り返ってみると、フランスではパティスリーが家族同士、友人同士のコミュニケーションに大切な一役を担っていると実感せずにはいられません。お菓子を囲んで家族が集い、思わず笑顔がこぼれてしまう。笑顔の先の大切な人たちの姿を思い返しつつ、パティスリーという世界をますます愛おしく感じる今日この頃です。

イラスト
Iveta Karpathyova
ILLUSTRATION & CREATIVE SERVICES
www.ivetaka.com

 

 パティスリー「セバスチャン・ゴダール」

Patisserie des Martyrs - Sebastien Gaudard -
パティスリー・デ・マルティール - セバスチャン・ゴダール -

セバスチャン・ゴダールが2011年にオープンした初の路面店。場所は美食通りとして名高いパリ9区のマルティール通り。コンセプトはフランス菓子の伝統を伝えること。斬新さやデザイン性を追及するのではなく、誰もが記憶に留めているフランスの古き良きクラッシック・パティスリーの奥深さを追求。ショーウィンドーを飾るのはパリ・ブレストからサントノレといった伝統パティスリーに加えて、クロワッサン等のヴィノワズリー類、ボンボン・ショコラ、アイスクリーム、昔ながらの飴類、お茶類など、コンフィズリーも充実。さらに、パティスリーに合わせて楽しめるシャンパンやワイン、リキュールなど、アルコール類も豊富に取り揃えている。
Patisserie des Martyrs -Sebastien Gaudard-
22, Rue des Martyrs 75009 Paris
Tel : 01 71 18 24 70
www.sebastiengaudard.com 

Sebastien Gaudard セバスチャン・ゴダール
1970年ロワール地方生まれ。『FAUCHON(フォーション)』のシェフ・パティシエを務めた後、老舗高級百貨店『Le Bon Marche(ボン・マルシェ)』にサロン・ド・テ『Delicabar(デリカバー)』をオープン。
時代をリードする存在として注目される。2011年自身の名を掲げた路面店『Patisserie des Martyrs - Sebastien Gaudard-』をオープン。
2012年 Guide Pudloが選ぶ『トップシェフパティシエ』受賞
著書
『Agitateur de gout』 2006年 (Hachette出版)
『Le Meilleur des Desserts』 2009年 (Hachette出版)

  • サンシュルピス広場

    パティスリーの店内

  • セバスチャン・ゴダール

    セバスチャン・ゴダール氏  

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